Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
一
IH
「何それ。そういう自慢だったら私に敵うはずないわ。
それにあんたはお兄さんに愛されてるじゃない」
呆れた。自分がいかに不幸だったかを言いたいだけなのか。
一瞬でも期待してしまった自分がバカみたいだ。
冷めた視線を向けたのに彼も気がついたのだろう。肩を竦めて見せ、
言い訳をしてきた。
「まあ、愛されてないわけじゃないと思うけどね。
でも、俺はあの家では浮いた存在なんだよ」
てっきり愛されてないとでも言うのかと思えば、予想に反して
肯定してきた。涼介は自身が愛されているときちんと認識している
らしい。
みのりは内心で驚きを隠したまま、あと続いた言葉に首をひねった。
「浮いた存在?」
「……少しどっかに座ろうか。
ちょっと長くなるけどこの際だから話すよ、俺のこと」
涼介は気分を入れ替えるかのようにため息を吐き出す。
そして急に辺りを見渡すや、人が座れるくらいの石の上に座り込んだ。
「え? えぇ……」
みのりはためらいながらも、
青年のあとへ続き近くにあった石に腰をおろした。
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