Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





III




(やっぱり犯人は先生ってことじゃない!)


 みのりは麻里をさらに追及しようと、一歩前へ踏み出る。その時、

目の端で涼介を捉えた。困ったように眉根を下げる彼の苦笑いに、

足が止まった。


(2人の秘密にしておいて、なんて私が言ったのに

しゃべっちゃったから呆れてるんだわ、きっと)


 元々、みんなのいる前で打ち明けるつもりなんてなかった。

だが、こぼれた水が元に戻らないのと同じように、一度口から出た

言葉をなかったことにはできない。みのりは涼介から視線をずらし、

再度麻里を見つめた。そこへ背後から、碧の普段よりも低めの声が

聞こえてくる。


「ほう。あなたが高松の……そうですか……」

(そういえば碧はあの高松って人を知っているのよね……)


 彼が梅宮の血縁だということも知っているのだろうか。

みのりは、父の隠し子かもしれないとわかった時のショックを思い出し、

身震いした。


(お祖父様の子供だっていう線の方が強いって

涼介も言っていたじゃない)


 だから大丈夫だ。混乱しそうになる頭を落ち着かせていると、

同じように動転した様子の野木崎の声が木霊した。


「ちょっと、何の話? 首都再計画って?

あなた先生じゃなかったの?」


 目を白黒させ野木崎が麻里へ詰め寄る。麻里が、勢いよく

ガバッと直角に体を折った。


「黙っていてごめんなさい。私は都の職員で『首都再計画執務室』の

一員です。私の上司、高松悟室長からの指令でこの黄梅にやってきました。

黄梅市を開かれた市にしてみのりさんを真の解放へと導け、と……」

「……都の人間」


 ぽつりと呟かれた言葉にみのりは後ろへ振り返る。

そこには、ねめつけるような眼差しを麻里へ向けている紅の姿が

あった。










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