Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





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「語るに落ちましたね、山波さん」


 静かな口調で野木崎が勝利を宣言してくる。

自分の不利だと悟ったのか、山波が視線を逸らした。


「……ふん!」


 拗ねたように鼻を鳴らす山波を見ていた太一が、

またしても袖を引っ張ってくる。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん。おじちゃんはみんなの幸せじゃなくて

人間だけの幸せを願っちゃったの?」


 言いにくい本質を無邪気に指摘する太一を前に、

涼介は言葉を詰まらせる。


「……うん……。そう……みたいだね……」


 なるべく少年が傷つかないようためらいがちに頷くと、

小越が鋭く叫んだ。


「そんな! 酷い!」


 よほどショックだったのだろうか。

 顔を青ざめ唇を震わせている小越を眺めていると、

みのりがおもむろに口を開く。


「山波さん、どうなんですか?

 太一君の言う通り、みんなの幸せではなく人間だけの幸せを願ったのですか?」


 確かめるように問うその声は凛とした雰囲気を纏い、

有無を言わせぬ気迫がある。

(さすが、って感じだよな……)


 この少女はただ守られることを良しとしないだろう。

それでもできれば隣に並びたいと願ってしまう。

なんておこがましいことを。


(彼女の隣にいるべきは、俺じゃない)


 涼介はかぶりを振って雑念を追い出した。










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