Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
八
IIII@
「語るに落ちましたね、山波さん」
静かな口調で野木崎が勝利を宣言してくる。
自分の不利だと悟ったのか、山波が視線を逸らした。
「……ふん!」
拗ねたように鼻を鳴らす山波を見ていた太一が、
またしても袖を引っ張ってくる。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。おじちゃんはみんなの幸せじゃなくて
人間だけの幸せを願っちゃったの?」
言いにくい本質を無邪気に指摘する太一を前に、
涼介は言葉を詰まらせる。
「……うん……。そう……みたいだね……」
なるべく少年が傷つかないようためらいがちに頷くと、
小越が鋭く叫んだ。
「そんな! 酷い!」
よほどショックだったのだろうか。
顔を青ざめ唇を震わせている小越を眺めていると、
みのりがおもむろに口を開く。
「山波さん、どうなんですか?
太一君の言う通り、みんなの幸せではなく人間だけの幸せを願ったのですか?」
確かめるように問うその声は凛とした雰囲気を纏い、
有無を言わせぬ気迫がある。
(さすが、って感じだよな……)
この少女はただ守られることを良しとしないだろう。
それでもできれば隣に並びたいと願ってしまう。
なんておこがましいことを。
(彼女の隣にいるべきは、俺じゃない)
涼介はかぶりを振って雑念を追い出した。
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