Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





A




 過去の傷に向き合うのは思った以上にきつい作業だ。

涼介はともすれば折れそうになる心に鞭打って話を続ける。


「ああ。なんでも祖父が『自ら育てたい』っていう意思を

尊重してってことらしいんだけど、

俺からしてみれば『なんで俺?』って思ったな」


 ぽろりと本音をこぼすと、みのりが目を見開く。


「お祖父様が? それをご両親は素直に受け入れてしまったの?」


 みのりからしてみれば不自然この上ないことなのだろう。

確かに自分もずっと不満に思っていた。

祖父は何を託したいと思っているのか。

祖母はなぜあそこまで自分に厳しかったのか。

両親はどうして自分たちの手を離してしまったのか。

改めてそのことを指摘されると、やはり首を傾げざるをえない。

涼介はしばし黙考し、おもむろに口を開く。


「ああ。母親は祖父の方針に賛成みたいだったし、

父親はそもそも婿養子だから文句も言えなかったんじゃないかな。

まあ、言う気もなかったかもしれないけど」


 父親のことを考える度「自分の意思のない人」というイメージが浮かぶ。

本当は色々考えてのことなのかもしれないが、

とかく寡黙な人物なので何を考えているのかわからないのである。


(まあ、俺も似たような口なのかもしれないけど……)


 こっそり息を吐いていると、みのりが問いかけてくる。


「あなたのお父さまも婿養子だったの?

知らなかったわ。でも、なんであなただったのかしらね?」


 祖父の言葉が気になっているらしい。

そりゃそうだよな、と内心で首肯しつつ、涼介は答えた。 










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