Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
八
IIIIC
「え? なんですか?」
微かに漏れ出た小さな声に、野木崎が耳へ手を当て聞き返す。
わなわなと身体を震わせて俯いていた山波が顔をあげ吠えた。
「そうだよ。あーそうだよ! 悪いか! 俺は人間だ!
人間だけの幸せを願って何が悪いんだ!」
皆からの責め苦にたえられず、破れかぶれになっているのかも
しれない。山波のただでさえ怖面の顔が、さらに凶悪になっていた。
「だいたいお前らは何なんだ!
寄ってたかって俺の、俺の家族の平和をめちゃくちゃにしたいのか!
俺は今がいいんだ! 変わらなくていいんだよ!
変わってほしくないんだ! なあ、みんな! 分かるだろ?!」
唾を飛ばす勢いで持論を唱える山波に、みのりはただ圧倒される
ばかりだった。誰も口を挟むことができないまま話が終わりを迎える。
訴えかけるように視線を彷徨わせる山波に、みのりは俯くことしか
できなかった。
(本当に山波さんが裏切っていたの? 先生じゃなくて?)
野木崎の推測があたってしまった。みのりは想定外の展開に愕然と
する。シンッと静まり返った重苦しい空気を、野木崎の優しく
諭すような声が壊した。
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