Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IIIIC




「え? なんですか?」


 微かに漏れ出た小さな声に、野木崎が耳へ手を当て聞き返す。

わなわなと身体を震わせて俯いていた山波が顔をあげ吠えた。


「そうだよ。あーそうだよ! 悪いか! 俺は人間だ!

人間だけの幸せを願って何が悪いんだ!」


 皆からの責め苦にたえられず、破れかぶれになっているのかも

しれない。山波のただでさえ怖面の顔が、さらに凶悪になっていた。


「だいたいお前らは何なんだ!

寄ってたかって俺の、俺の家族の平和をめちゃくちゃにしたいのか!

俺は今がいいんだ! 変わらなくていいんだよ!

変わってほしくないんだ! なあ、みんな! 分かるだろ?!」


 唾を飛ばす勢いで持論を唱える山波に、みのりはただ圧倒される

ばかりだった。誰も口を挟むことができないまま話が終わりを迎える。

訴えかけるように視線を彷徨わせる山波に、みのりは俯くことしか

できなかった。


(本当に山波さんが裏切っていたの? 先生じゃなくて?)


 野木崎の推測があたってしまった。みのりは想定外の展開に愕然と

する。シンッと静まり返った重苦しい空気を、野木崎の優しく

諭すような声が壊した。










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