Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
八
IIIIG
「山波さん。変わることに恐怖を感じる気持ちは分かります。
あなたがご自分に誠実であるということも。
ですから、お願いします。もう一度あなたに家族だけでなく、
みんなにとっての幸福がなんなのかを、
考え直してみてはくれないでしょうか」
澄んだ瞳で誠実に訴える涼介の言葉が胸に突き刺さる。
みのりは胸元へ手をあてた。
(皆を騙してる私は山波さんと違って誠実じゃないものね……)
唇を噛んで苦痛をやりすごしていると、山波が涼介から距離を
置くように1歩後ずさる。
「俺は、俺は……」
「おじちゃん、みんなにごめんなさいって言おう。
そうしたらみんな許してくれるよ?」
太一が山波の袖を引っ張り、潤んだ瞳で懇願した。
だが、少年の健気な態度すら山波の頑なな心には届かなったようだ。
「俺は! 俺はもう十分考えた。俺は間違っちゃいない。
間違ってなんかいないんだ!」
「おじちゃんのわからずや! いい人だと思ってたのに!」
「ぐっ……! ……俺だって願ったんだ! 願ったんだよ!」
顔を真っ赤に染めた太一の一喝が山波にはたえられなかった
みたいだ。
突然その場から逃げるようにどこかへ走って行ってしまった。
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