Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
二
B
「それもちゃんと聞いたことはないんだ。ただ、俺が生まれた時、
祖父が『この子だ。やっと涼の字を継ぐべき者が現れた』とか言ったらしいよ。
2番目の兄貴から聞いた話だから信憑性があるんだかないんだかだけどね」
物心つく頃には何かにつけて言われている言葉だった。
今でも意味がわからないが、祖父母が亡くなってからも、
たまに兄たちに言われることがある。
(涼の字がなんだっていうんだろう?)
大学へ入って色々と自分なりに調べてもみたが、未だその謎は解けていない。
「涼の字を継ぐべき者? そういえば上の方とあなただけ名前の形式が違うわよね」
みのりの指摘に涼介は同意する。
「ああ。当然だけど父親も違う」
そうなのだ。
兄たちには涼の字がついていない。
だが、ついていないからと言って長兄が跡取りでないわけでもない。
「母親の名前が涼乃(すずの)っていうから母が涼を継いだってこと
なんだろうけどそれもよくわからない。
ただ俺も昔祖母が『お前は涼の名を継ぐ者。それに恥じぬよう生きなさい』
ってだけはよく言われたな」
意味のわからないことだけを言い続け、厳しくしつけられてきた。
それが良いことなのか悪いことなのかはわからないが、
最近では少しは意味があるのではないかと思うようになってもきている。
涼介は、頬に手をあて考え込んでいるらしいみのり横顔を、
こっそりと見つめた。
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