Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
九
G
「太一君はダメだよ。お家に帰らないと」
涼介が太一と目線を合わせるためにしゃがみ込む。
そしてはしゃぐ少年の肩に手を置いた。
「今度もっとゆっくりした時においで。お菓子用意して待ってるから」
涼介が唇を尖らせる太一を宥めすかす。その彼を援護するように、
野木崎が言葉を重ねた。
「そうよ。梅畑君の言う通りだわ。もう夜も遅くなってきてるし、
お母さんも心配してるわよ」
「えーだって、みんなおじちゃんを追いかけに行くんでしょう。
ぼくだけのけ者はヤダよー」
頬を膨らませ、嫌だ嫌だと顔を横に振る太一に、
野木崎があっ気らかんと言い放つ。
「私は行かないわよ。申し訳ないけど家族も心配してるだろうしね。
最初からみのり様にお任せするつもりだったわ」
人の都合など考えもしなかったせいで山波のようなことが起きて
しまったのだ。ここは未成年の太一よりも野木崎の意見を優先
させよう。みのりは彼女の言葉に、飛びつくように頷いた。
「はい。もちろんです。太一君も心配しないで」
「……うーん」
満面の笑みを少年に向けるが、太一は納得できないようだ。
曖昧に頷き、ちらりと涼介を見た。
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