Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
九
I@
「でも逃げた先に車があるなんてタイミングよすぎない?
なんだか山波さんが逃げることを見越していたみたいじゃない」
もっともな野木崎の言葉に涼介は吐息する。
「俺がここにいるから、だと思います。
どこに埋め込まれてるのかわかんないですけど、位置情報筒抜けだと思いますよ」
己を指さしつつ説明すると、野木崎が目を剥いた。
「それって梅畑君が裏切り者だったってこと? 山波さんじゃなかったの!」
なんでそうなるかなあ。胸の内でぼやきつつ、涼介は頬を掻く。
「相変わらず飛躍しますね。裏切ってませんよ。利用されてるだけです。
今のところ負けっぱなしってことですよ」
実にかっこ悪い事実だ。
できればみのりには聞かれたくはなかったが、
今更かっこつけたところでどうにもならない。
(もう少しスマートになんでもこなせたらいいのになあ……)
たとえば、自分の居場所くらいかく乱させてみせる、
とか。重い溜め息を吐いていると、野木崎が目をしばたたかせた。
「え? そうなの?
それじゃあ、やっぱり裏切者は山波さんだったてこと?」
涼介は目を見開く。
あそこまでかっこ良く相手を追い詰めていた人物と同じ人間だとは思えない。
(なんか、結局みんな変わってるよな、このメンバー)
だが、今は自分もその一人なのだと思い至り、涼介は心の底から脱力した。
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