Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





C




「その名に何か意味が込められているのね。でも知らなかったわ。

そんな決まりごとがあったなんて」


 当主である母親ならば知っていることだったのだろうか。

次期当主がこんなことも知らないなんて、と目くじらを立てる

美都子の姿を想像し落ち込む。


(でも、お母様に怒られるのも涼介にしたらうらやましいこと

なのかしら?)

「ああ」


 考え事に返事をされたのかと思い、ぎょっとする。

しかし、違っていた。

先ほど言った感想に対してのものだったらしい。


「でも俺にわかってるのは自分がいつも一人だったってことだけさ」


 目を合わせることなく昔を語る涼介の顔を、

みのりはじっと眺めた。


「この涼の字のせいなのか知らないけど、みんな腫れ物に触るような

感じなのに躾だけは厳しくてさ」


 乾いた笑いと寂しげに揺れる瞳が、胸を切なくさせる。

幼かった頃の涼介を想い、顔をしかめた。

守ってくれるような存在はいなかったのだろうか。


「お祖父様だけじゃなくて、お祖母様も厳しかったの?」


 顔色を窺いながら訊いてみると、涼介が軽く首を左右に振った。










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