Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
九
ID
「碧さん。実はちょっと、先にお話したいことがあるんですが、
ちょっとだけ時間もらえませんか?」
涼介が緊張した面持ちで碧へ話しかける。碧が人の良さそうな
柔和な笑みで頷いた。
「ええ、いいですよ」
「ありがとうございます」
碧の返答に心底ホッとしたというような顔で涼介がお辞儀する。
(何の話をするのかしら?)
みのりは彼らの話に耳をそば立てようとする。
しかし、それを拒むかのように涼介が碧を連れ出そうとした。
「それじゃあ、ちょっとこっちへ」
「はい」
素直に従う碧と歩きながらふいに涼介が振り返る。
「みのりさん、ちょっと碧さん借りるよ。
みんなと少しだけ待っててくれないかな?」
せっかく盗み聞きしようと思っていたのにその目論見は見事
外されてしまった。みのりは涼介たちを引きとめることができず、
可愛くない態度をとる。
「え? ちょっと急いでよね」
とっさに取ってしまった自分の行動に後悔するが、
涼介は気にした様子もなく碧を誘導しながら礼を言ってくる。
「ああ。ありがとう」
みのりが普通の態度をしてくる涼介に謝ることもできず
あわあわしていると、野木崎が彼を引きとめた。
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