Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





D




「むしろ逆かな。祖父のほう祖母より数倍優しかった。

もちろん行儀作法は厳しかったけど、よく微笑んでる印象だったし

膝の上に乗って昔話を語ってくれたりした覚えがあるよ。

獣人たちの話も聞いた」


 昔を懐かしむように語られる涼介の頬が微かに緩み、

みのりは安堵する。だがそれもつかの間、彼の顔に憂愁の影が差した。


「けど、祖母は違う。問答無用で梅八家のことを叩き込み、

梅宮のために生きろと言われたっけ」

「お祖父様のほうが優しかったんだ。あれ、でも11歳までって」


 重苦しくなった空気を軽くさせようと言葉を続けるも、

上手い言葉が見つからず口ごもる。

すると涼介が気を使うように肩を竦め、笑って見せた。


「そう。祖父の涼蔵は88歳、祖母のイネは92歳になる年に

亡くなった。その後俺を育てたのは上の兄貴さ」

「お祖父様のほうが先に亡くなられたの?」


 半ば確信めいた疑問を口にする。案の定、涼介は、そう、と頷いた。


「それまでは俺もよく笑ってた気がする。

でも、祖父が亡くなってから色々変わったんだ。

祖母と雅秋兄の教育方針はどちらも厳しくてね。

特に雅秋兄のほうは本当に独特でさ」

(本当によく似ているわ……)


 唯一の味方だった祖父がいなくなり、厳しいだけの祖母たちとの

暮しがどれほどつらく寂しいものだったか。

みのりには容易に想像ができた。










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