Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
二
E
(こんなにも私と被るなんて嫌になるわね……)
幼い頃から母親は厳格だった。祖父の記憶はあまりないが、
祖母がいた頃は特に厳しかったかもしれない。
やることなすこと目くじらを立ててくる母が怖くて、祖母に会うのが
億劫に感じたほどだった。父にすがってみてもやんわりと拒絶され、
兄に甘えてみても母に叱られるからと逃げられる。
味方なんてどこにもいなかった。きっと少年だった頃の涼介も同じ
気持ちだったに違いない。
(だから私の気持ちがわかるなんて言ったのね……)
口から出たでまかせだと思っていた。たまにいるのだ。
知りもしない癖に知ったような態度で接してくる人間が。
涼介の過去を知るまでは、彼もその類なのかと思っていた。
(涼介にだったら本当の私を見てもらえるのかな……)
碧や紅にすら、主と従者という隔たりがある。
他の人とは違い、一番親しい存在だと言っても過言ではない彼らで
さえそうなのだ。しかし涼介なら、他人に一線を引かれてしまう者
同士ならば、互いの線など気にせず寄り添うことができるのでは
ないだろうか。そんな淡い期待を胸に秘めると共に、
傷のなめ合いではないかと警笛を鳴らす自分もいた。
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