Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





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 涼介からもたらされた過去にみのりはあ然とする。

彼の幼少期の暮らしぶりは想像をはるかに超えていた。

ただでさえ特殊な一族だ。それは自分も同じなのだから理解できるし

共感もできた。だが、市長の弟に対する接し方だけは理解に苦しむ。

11歳といったら太一と同じくらいだろう。そんな年端もいかない

子供に対する雅秋の仕打ちにふつふつと怒りが湧いてきた。


「何よ、それ? 市長ってサドなの? なんでご両親は市長に

任せちゃうのよ! おかしいでしょう? おかしいわよね?

ていうか、確か市長とあなたの間にもう一人いたわよね?

その人は助けてくれなかったの?」


 矢継ぎ早に疑問を涼介へとぶつける。せめて碧以外にも彼を

救ってくれる人はいなかったのだろうか。祈りにも近い気持ちで

青年を見つめる。しかし、苦笑いを浮かべる涼介の顔を見て、

みのりは答えを聞く前になんとなく察してしまった。


「直接は助けてくれない、かな? でも、フォローはしてくれてる

と思うよ。それに雅秋兄も嫁さんが来てから随分変わったからさ」


 そういえば市長は妻帯者だった。だからといって過去は帳消しに

ならないはずだ。話している今でさえ、時折顔をしかめるほど

つらい記憶のはずなのに。

みのりは川で石を投げていた頃に出会った涼介の姿を思い出し、

涙が出そうになった。










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