Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





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『俺はあれらのために生きてるんだよ』

(あの時は嘘だって決めつけちゃったけど、もし本心だとしたら……)


 梅八家のためではなく、梅畑を、もっと厳密に言えば家族を守る

ために動いているとも考えられる。家族を守ることは巡り巡って

梅八家や梅宮を守ることにも繋がるだろう。それならば問題はない。

だがその逆の可能性もある。家族を守るために、梅八家ないしは

梅宮をも裏切る覚悟あるという考えだ。涼介はどう思っている

のだろう。みのりは彼の考えが知りたくなった。


「……信じたいって思ってるあなたに訊いていいのか

わからないんだけど……市長は、梅畑雅秋は本当に梅八家のことを

考えていると思う?」

「……そう思いたい。

けど、そうじゃないなら何度も言うけど俺は君につくよ」


 涼介の力強い言葉と熱のこもった眼差しに、鼓動が早くなる。


(この人なら隣に立ってくれるかも……)


 側近たちのように背後に立つのではなく。父が母の横に立って

いるように、自分のそばに寄り添ってくれるかもしれない。

みのりは高熱を出したときのように瞳を潤ませながら

彼を見つめ返した。そして決意する。


「……あのね、お母様は都と手を組むようなことは絶対に考えたり

しないの。だからお母様に従っている梅八家の人もそんな考えを

持っていないはずなのよ。……でも、市長は違うみたいなの」


 さっき聞いた市長と獣人の長との会話を涼介になら伝えてもいいと

思った。彼の過去を知る前だったら碧や紅と相談してから話しただろう。

あるいは涼介の裏切りを警戒して言わないままでいたかもしれない。

だが彼は家族からのひどい仕打ちを恨むことなく、何か理由がある

のだと言って信じようとしている。

みのりはそんな涼介を信じることに決めた。










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