Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
一
C
興奮しきった頭に小柄な年配の女性の声が響いた。
「若いっていいわねー」
「そうですなあ……」
山波にまで感慨深げにつぶやかれ、一瞬頭が冷える。
(あれ? 俺こんなことしちゃっていいんだっけか?)
途端に、みのりの腕を掴んでいることが意識にのぼり、内心で焦る。
(いやいや、でもここはきちんとみのりさんを説得しないと。
彼女のためにならないし)
みのりが自由を勝ち取るためには、
あの母親から逃げているだけではどうにもならない。
(太一君だってきちんとお祖母さんと向き合ったんだ。
君だってできるはずだ!)
気持ちを込めて腕に力を込めると、今度は老人の声が聞こえてきた。
「え、そうなのか? ここは止めたほうがいいんじゃないのか?」
「あんなに嫌がってるぞ?」
心配そうな2人の声に涼介は胸の内で溜め息を吐く。
(端から見たら俺って完全に悪者だよな……)
嫌がる女性に無体なことをしている自覚はあるだけに辛い。
これでますますみのりに嫌われることだろう。
恋心を伝える気は、
さらさらないがそれでも友人くらいにはなりたいと思っていた。
だが、その夢も潰えそうだ。
頭の中の異常に冷めた自分が乾いた笑い声を立てた。
「あんたに関係ないでしょう!
もう離してったら! 碧、見てないでなんとかしなさいよ!」
みのりの叫びで我に返る。
「そんなことはさせない! 君は俺と一緒に梅願へ帰るんだ!」
みのりを室内へ引っ張り込もうと足を踏ん張ると、
みのりも負けじと身を捩らせた。
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