Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IID




「俺は君と話せたから感謝してるけど?」

「すごく強引だったけどね……」


 みのりは、腕を引っぱられたときのことを脳裏に浮かべ肩を

竦めて見せる。涼介も同じことを思ったのだろう。

頭へ手をあて、苦笑した。その表情にみのりは、これまで振り

回されてきたときの仕返しができたと、胸がすっとする。

おかげで気がつけば思っていたことを素直に吐露していた。


「でもそうね。涼介と話しができたのはよかったわね」


 みのりは頬が自然と緩むのを抑えることなく、ニコリと笑う。

微かに涼介が目を丸くした。


「ああ、うん。よかったよ、本当に」


 涼介が顔を隠すように口元へ手を当て頷く。


(何よ、そんな変な顔だったの?)


 笑うのを必死でこらえているような仕草に、みのりはがっくりと

肩を落としたくなった。それでもなんとか平静さをとり、

涼介を促す。


「ええ。さて行きましょう」

「ああ」


 ゆっくりとこちらの歩調に合わせて歩く中、

みのりは涼介に繋がれたままの手を見つめた。てっきりすぐに

放されると思っていた彼の大きな手は、未だふんわりと手の上を

覆っている。


(汗、大丈夫かな?)


 だがもったいなくてこの手を放すことはできない。

せっかく涼介と手を繋げているのだ。こんなことはもう二度とないかも

しれない。それでも気にし始めたら余計に緊張で汗が出てきそうで、

みのりは何か話題がないかと頭を巡らせた。


「あ、ここで話したことは当分の間二人の秘密にしておいて

ほしいの」


 背中へぶつけた提案に涼介が振り返る。


「もちろんだよ。誰にも言わない。約束する」

「ええ。信じるわ」


 首を縦に振ると同時に涼介がギュッと手のひらに力を込める。

きっと無意識なのだろう。それでも嬉しかった。それが涼介の

本音だと思えたから。だから彼に返事をするべくみのりも、

同じように涼介の手を握り返した。










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