Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
三
I
「いいわー。とってもいいわー」
麗が手を組んでうっとりと言葉を紡ぐのを聞き、涼介は眉根を寄せる。
(これはまずい。碧さんに誤解されたらみのりさんが……)
早く言い訳しなければ、と思っていると向かいの山波が首を傾げた。
「そうですかね?」
どうやらこちらの状況には少しも興味がないらしい。
ありがたいようなありがたくないような。
なんとも複雑な気分でいると、朔太郎が邦夫を呼んだ。
「おい、邦ちゃん、麗ちゃんに変なスイッチ入ってないか?」
「あー、そうゆうんは見て見ぬ振りをするのが一番だべ」
「いくつになっても女性は女性ってことなんですねえ……」
しみじみとした口調でぼやく碧の言葉に、涼介はぎょっとする。
話の具合からするとどうやら完全に誤解されているような気がした。
(ええっと、こういう場合どう言って弁解したらいいんだ?)
自分に恋心がないと言ったら嘘になってしまう。
碧を相手にできればそれはしたくない。
なんだか卑怯な気がするし、そもそも彼にバレないはずもないからだ。
頭をフル回転させてみのりの利になる言葉をひねり出そうともがく。
だが、それより先に朔太郎が頷いた。
「そうだな。山波さんも麗ちゃんに構ってっと面倒だぞ」
どうも埒が明かないと納得してくれたようだ。
話が収束してくれるならこんなにありがたいことはない。
こっそりと山波へ耳打ちする朔太郎を横目にしながら、
涼介はそっと湯呑みを手に取った。
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