Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
三
IC
「この人がここにいたのってそういう意味だったの。
なんでいるのか不思議だったのよねー」
静まり返った空気の中、律子の呑気な声が広がる。
その声に高松がやっと動き出した。視線を彷徨わせ、旗色が悪いと
感じ取ったのだろう。肩を竦め、短く息を吐いた。
「……そうか。ならしかたがない。麻里君、俺は戻って休むよ。
あとのことはよろしく頼むね」
「え? あ、はい。わかりました……」
高松が麻里の肩へ軽く手を置き、立ちあがる。そこへ、朔太郎が
彼へ声をかけた。
「帰りはどうするんだ?」
「あ、歩いて帰りますよ。近くに実家がありますから」
にこりと微笑みながら応える高松に、麗が目を丸くする。
「あら、あなた都の人なのに黄梅の出身だったの?」
「はい。もう随分昔に黄梅を出たんですが、
母がまだ元気でおりますので」
(お母様が黄梅にいらっしゃるの?)
てっきり一緒に黄梅を出たと思っていた。あるいはすでに鬼籍に
入って一人なったから都へ移り住んだのだと思っていたが
違っていたらしい。
みのりは何気なく語られた、高松の話に心の中で目を見張った。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|