Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IC




「この人がここにいたのってそういう意味だったの。

なんでいるのか不思議だったのよねー」


 静まり返った空気の中、律子の呑気な声が広がる。

その声に高松がやっと動き出した。視線を彷徨わせ、旗色が悪いと

感じ取ったのだろう。肩を竦め、短く息を吐いた。


「……そうか。ならしかたがない。麻里君、俺は戻って休むよ。

あとのことはよろしく頼むね」

「え? あ、はい。わかりました……」


 高松が麻里の肩へ軽く手を置き、立ちあがる。そこへ、朔太郎が

彼へ声をかけた。


「帰りはどうするんだ?」

「あ、歩いて帰りますよ。近くに実家がありますから」


 にこりと微笑みながら応える高松に、麗が目を丸くする。


「あら、あなた都の人なのに黄梅の出身だったの?」

「はい。もう随分昔に黄梅を出たんですが、

母がまだ元気でおりますので」

(お母様が黄梅にいらっしゃるの?)


 てっきり一緒に黄梅を出たと思っていた。あるいはすでに鬼籍に

入って一人なったから都へ移り住んだのだと思っていたが

違っていたらしい。

みのりは何気なく語られた、高松の話に心の中で目を見張った。










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