Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
三
II
涼介が野臥間へ解読を頼んだあと、お手上げと言うふうに
肩を竦める。
「俺も一通り習ったんだけど、それでもちょっとわからないんだ。
多分どっかの橋なんだとは思うんだけど」
みのりは机に置かれた地図へ視線を向けた。
(これって地図? あ、でも古字で書かれた文章もあるわね)
解読を試みようと身を乗り出す。同じタイミングで涼介の腕が
伸びてきた。ふわりと掠める洗剤の香りと、隣から伝わってくる
青年の体温に体が固まる。一気に顔へと集まってくる熱に、
みのりは動転した。
(こんなんじゃすぐに私の気持ちが涼介にわかっちゃう!)
それだけはなんとしてでも阻止しなければならない。
だが、意識すればするほど自分の意思とは関係なく頭の中は
涼介のことでいっぱいになってしまう。
(今は地図に集中するのよ。地図に)
言い聞かせるように念じながら、地図に書かれている古字へ
焦点を合わせた。しかし涼介の節くれだった指が地図の上を滑り
始めると、古字を見つめていた視線は猫じゃらしに釘づけになった
猫のように青年の指先を追いかけた。
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