Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





II




 涼介が野臥間へ解読を頼んだあと、お手上げと言うふうに

肩を竦める。


「俺も一通り習ったんだけど、それでもちょっとわからないんだ。

多分どっかの橋なんだとは思うんだけど」


 みのりは机に置かれた地図へ視線を向けた。


(これって地図? あ、でも古字で書かれた文章もあるわね)


 解読を試みようと身を乗り出す。同じタイミングで涼介の腕が

伸びてきた。ふわりと掠める洗剤の香りと、隣から伝わってくる

青年の体温に体が固まる。一気に顔へと集まってくる熱に、

みのりは動転した。


(こんなんじゃすぐに私の気持ちが涼介にわかっちゃう!)


 それだけはなんとしてでも阻止しなければならない。

だが、意識すればするほど自分の意思とは関係なく頭の中は

涼介のことでいっぱいになってしまう。


(今は地図に集中するのよ。地図に)


 言い聞かせるように念じながら、地図に書かれている古字へ

焦点を合わせた。しかし涼介の節くれだった指が地図の上を滑り

始めると、古字を見つめていた視線は猫じゃらしに釘づけになった

猫のように青年の指先を追いかけた。










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