Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IIB




「紅、狭いならこっちへおいで」

「兄さん、うざいです」

「べ、紅ー」


 紅が碧の気遣いを辛辣に返す。その言葉に打ちひしがれる側近の

姿はいつも通りと言えばいつも通りだ。だが紅の態度はやはり少し

違うような気がする。


(さっきの上司命令が尾を引いているってところなのかしら?)


 結果的には涼介と二人で話せたことは良かった。しかし、碧が

自分を容易に見捨てた事実は変わりない。紅の態度は側近への

報復にちょうどいいだろう。みのりが内心でほくそ笑んでいると、

太一が涼介へひそひそと話しかけていた。


「お兄ちゃん、あの人本当にお兄ちゃんの師匠なの?」

「そうだよ。妹思いのいい人だろう?」

「あれって妹思いっていうのかなー?」


 首をひねる太一に、みのりは心の中で同意する。


(涼介の眼には変なフィルターがかかっちゃってるのよね、きっと)


 そうでなければ紅へ対する碧の態度を見て妹思いなどという感想は

抱かないだろう。


(碧に恩義を感じているんだから無理もないわよね)


 さっき聞いた涼介の過去の話を思い出していると、

野木崎がぽつりとつぶやいた。


「シスコンもある意味、妹思いではあるわよね」


 確かにそれも一理あるかもしれない。


「んーと、『梅願の裾野に流るる川をつなぐ橋にて真の姿を現さむ』

ってここに書いてあるべ」


 野木崎の言葉に、ひとり感心していると

野臥間が文字をさすりながら地図に書かれている文書を読んだ。










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