Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
一
F
「賛成だな」
冷静な声で告げて踵を返すメガネの男に、小越が戸惑ったような声をあげる。
「え、でも、ちょっと気になるんですけど……」
気になる、とはどんな意味でなのだろう。
こちらとしても、これ以上見物されるのは御免なのだが。
(みのりさんがおとなしくついてきてくれたらいいんだけどなあ)
まあ、そんなに素直な人間でもないことはよく知っているのだが。
そっと吐息していると、案の定みのりが眉根を寄せる。
「はあ?
語り合うって、碧がこの男をどこかへ連れていけばいい話じゃない!」
この男。
そう呼ばれるのは覚悟していたが、直に聞くのはさすがに堪える。
(俺、もう目が合うのも嫌だって感じになるんじゃないのか?)
胸の痛みが激しくなる。
(まあ、しかたがない。
相手は碧さんだし。勘違いされたくないってのもあるだろうしな……)
ついつい頬をかいていると、老齢の女性がふふふ、と笑い声を立てた。
「ここは若いもんに任せてーってやつね」
「いいのかい、麗ちゃん?」
「麗ちゃんがいいって言ってるんだからいいんだろう」
側にいた老人2人が麗ちゃんと呼ばれた老齢の女性の両隣で頷き合う。
(見合いじゃないんだけど……)
突っ込んでやりたい気分をどうにか押し殺し、涼介は再度みのりの腕を引いた。
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