Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IIIB




「え? お弁当いつ食べたのよ? 私、食べてないわよ!」


 みのりの言葉に涼介は目を見開く。

もしかして自分が食べていないことに気づいていなかったのだろうか。


(そんなわけないか)


 ただ拗ねているだけなのだろう。

小さく肩を竦めていると碧が頷く。


「ああ、みのり様が外へ行かれたあとで……確か、小越先生が

部屋に戻ってきた頃でしたよね?」

「はい。あの、美味しかったです」


 碧の言葉に小越が微笑む。

それはそれは美味しい弁当だったのだろう。


(ちょっと食べてみたかったなあ……)


 満足げな小越の表情を見て生唾を飲み込んでいると、太一がみのりを見やった。


「みのり様もお昼食べてなかったの?」

「そうみたい。なんか色々あってお腹もすかなかったから忘れてたわ」


 みのりの発言に涼介は頬を掻く。

事態の半分は自分のせいなのだが、内容が内容なだけに、

ここで謝るわけにもいかない。

決まり悪さを誤魔化すべく姿勢を正していると、野木崎が追い打ちをかけてくる。


「ダメですよ。若いころの無理なダイエットは。お肌にも悪いですからね」

「ダイエットをしてるわけではないんですけど……」


 眉を潜める野木崎にみのりが語尾を濁す。

だが表立ってフォローするわけにもいかない。


「それじゃあ、今日は一回家に帰って、また明日行くことにしませんか?」


 苦し紛れに提案してみると、野臥間が瞳をまたたかせた。










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