Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IIIH




「そういえば、行きは山波さんにお願いしてましたね」


 言葉をかけられ、山波が一瞬眉間に皺を寄せる。


「鹿さん、いい人」


 紅がぽそりと呟くと、山波が渋い顔をさらに渋くした。


「角を呼ぶんですかい? そりゃあちょっと……」


 明らかに否定的なその言葉に、涼介は腕を組む。

やはり娘の彼氏に協力を頼むのが躊躇われるのだろう。

しかも相手は山波が快く思っていない獣人だ。


(やっぱりタクシーとかのほうがいいんじゃないかな……)


 そうは思ったものの、

逆にタクシーの運転手に余計な危害が加わる可能性を思い出した。


(これ以上危ない橋に他人を巻き込むわけにもいかないものな……)


 開きかけた口をつぐむと同時に、みのりが山波へ尋ねる。


「山波さんもう一度飛田さんを呼んでもらうわけにはいかないですか?」


 沈黙が続く。

しばらくして、山波が重々しく首を縦に振った。


「……娘に電話してみます……」


 携帯をポケットからだし立ち上がる。


「お嬢様、ご無理を言ってはいけませんよ。

それにこんな大所帯全員が入る車なんてそうそうありませんよ。

おや、山波さんよろしいんですか?」


 みのりを諌めていた碧が部屋を出ようとする山波を見て目を瞬いた。


「……はい。今は個人的な感情云々を言っている場合ではないようですからな」

「ありがとうございます山波さん!」


 不承不承と言った雰囲気で肯定する山波へみのりが微笑む。

それを見ていた隣にいた紅が少しだけ目元を和らげた。

「おじさん、ちょっといい人」


 その言葉を合図に、一同が立ち上がる。


「それでは野臥間さん、お邪魔しました」


 改めて挨拶をするみのりに並び、涼介は一礼した。










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