Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





A




「うわぁー大きな橋だねー」


 太一は、大人たちとは違い、車から出るやすくざま橋へ走って

行く。そのあとを麻里が、若干髪を乱しながら追いかけた。


「あ、待って! 太一君」

「あんまりはしゃぐなよ」

「はーい」


 山波が腰を叩きながら太一を諌める。

しかし、太一には右から左だったようだ。

元気よく返事をしているが少年はすでに橋の欄干から顔を出し、

川を覗き込んでいた。落ちないように麻里が太一の服を

掴んでいるから大丈夫だろう。みのりは少年の小学生らしい行動に

微笑みつつ、周囲を見回した。


「でも普通の橋よね。ここで何が起きるのかしら?」


 橋を渡った先は獣人の居住区だが、

何の変哲もないアスファルトに見える。

橋だってどこにでもありそうな、白いアーチ型のものだ。

涼介たちが見つけ出してくれた地図がなければ、近づきも

しなかっただろう。そんなことを考えていると、隣に人の

気配を感じた。


「正直まったくわかんないよ」


 野木崎の隣にいたはずの涼介がため息を吐くように応えた。










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