Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
四
A
「うわぁー大きな橋だねー」
太一は、大人たちとは違い、車から出るやすくざま橋へ走って
行く。そのあとを麻里が、若干髪を乱しながら追いかけた。
「あ、待って! 太一君」
「あんまりはしゃぐなよ」
「はーい」
山波が腰を叩きながら太一を諌める。
しかし、太一には右から左だったようだ。
元気よく返事をしているが少年はすでに橋の欄干から顔を出し、
川を覗き込んでいた。落ちないように麻里が太一の服を
掴んでいるから大丈夫だろう。みのりは少年の小学生らしい行動に
微笑みつつ、周囲を見回した。
「でも普通の橋よね。ここで何が起きるのかしら?」
橋を渡った先は獣人の居住区だが、
何の変哲もないアスファルトに見える。
橋だってどこにでもありそうな、白いアーチ型のものだ。
涼介たちが見つけ出してくれた地図がなければ、近づきも
しなかっただろう。そんなことを考えていると、隣に人の
気配を感じた。
「正直まったくわかんないよ」
野木崎の隣にいたはずの涼介がため息を吐くように応えた。
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