Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





C




「おや、やっとお目覚めですか雪姫様」

「う、うーん。わらわの氷ー!!」


 雪姫が、小さな子供のようにぐずりながら開かない瞼をこする。

そして飛び起きた。彼女の声に山波の娘、芽衣子が興味深げに

近づいてくる。


「何なに? 何が起こってるの? 雪姫ってなんなの? お父さん」


 興奮気味に山波の服の袖を引っ張る芽衣子を山波が諌めた。


「お前は知らんでいい。黙って待ってろ」

「やっぱり眠っていただけなのね。良かった」


 野木崎の安堵の声に、芽衣子が首をかしげる。


「雪姫さまがいるの? そこに?」

「おい、下がってろ」


 山波を押しのけ前へ出ようとする芽衣子の肩を山波が掴んだ。

だがそこまでしても彼女には効果がないようだ。

なおも近づいてこようとする。そこに涼介が芽衣子を阻むように、

雪姫へ話しかけていた。


「雪姫、よく眠れましたか?」

「え、何なに、どうしたの?」


 橋の欄干で麻里と遊んでいた太一も雪姫の声に反応したのか、

小走りで戻ってくる。


「わらわの氷はどこまろ?」


 籠の中からきょろきょろと辺りを見る雪姫に、涼介が重々しい

口調で告げた。


「これから作る……予定です」


 涼介の言葉とは逆に芽衣子の楽し気な声が聞こえてくる。


「わー! 小さい! かわいい!!」

「小さい? どこにもいないけど……」


 芽衣子が見えるなら一緒にいる飛田だって見えるはずだ。

それなのに彼の視線は籠の中には向いていなかった。


(あれ? なんで飛田さんには見えないのかしら?)


 みのりが内心で首をかしげていると、山波の怒鳴り声が木霊した。


「だから、お前らは黙ってろ!」


 しかし芽衣子には山波の怒鳴り声など効いていないみたいだ。

目尻を下げ、雪姫と対面している。


「作るって、涼介、作り方知ってるの?」


 みのりは、芽衣子が雪姫に夢中になっている隙に涼介に尋ねた。










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