Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IB




「中心へ連れて行くマロ」

「え? 中心って橋の中心ってこと?」


 みのりが雪姫に確認を取っていると、雪姫の返答よりも先に

涼介が提案してきた。


「とりあえず、雪姫の言う通りにしてみよう」

「これもちょうど完成したし、一緒に持って行ったほうがいいわよね」


 野木崎が涼介の言葉に頷き、いつの間にか完成させていた

かき氷器を掲げて見せる。

しかし麻里が困り顔で、歩き出そうとする野木崎を引き止めた。


「でも、氷がまだありませんよ?」


 たしかに麻里の言う通りだ。みのりが内心で頷いていると、

紅が芽衣子に話しかけていた。


「雪姫、貸して」

「あ、はい」


 芽衣子が、両手を前につき出している紅の手のひらへ籠をそっと置く。


「ありがと」


 小さく頭下げる紅に、芽衣子もつられてお辞儀をしていた。

率先と人に話しかけたりしない紅の行動を微笑ましく思いながらも

みのりは、野木崎たちの会話に耳をかたむける。


「橋を凍らせたくらいだし、雪姫様について行けば

氷とか出しちゃうかもよ」


 なるほど。一理ある。野木崎の言葉に感心していると、

麻里が困惑気味に顔をしかめていた。


「そうなんでしょうか?」


 みのりは否定的な言葉を繰り返す麻里よりも、野木崎の意見を

取り入れること決めた。


(それに涼介も橋へ行こうって言っていたものね)


 ちらりと涼介へ顔を向ける。何かを見て微笑んでいる彼の姿に心臓が

ドクンと脈打った。これ以上先を見てはいけない。

嫌な予感が脳裏を駆け巡る。みのりは警戒音のように早くなる鼓動を

無視して、涼介の視線の先を探した。


(……紅)

「お嬢さま、雪姫」


 はにかみように笑いながら籠を渡してくる紅と目が合った。










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