Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
四
ID
そうだ。嘘だ。俺は嘘を吐いているんだ。
(本当は独占したいんだ)
本当は碧にも紅にも、太一にだって触れられたくない。
でもその想いは、彼女たちにとって迷惑でしかないだろう。
(今は、そんな場合じゃないしな)
握り締めた拳を強くしていると、野木崎が小越に告げる。
「雪姫様もああ言ってるし大丈夫よ、きっと。さ、行きましょう」
「はい」
歩いて橋へと向かう小越たちを何気なく眺めていると、
さらに前方から太一の声がした。
「うわぁー、ツルツルして滑るー!」
太一の叫びに碧がみのりと紅を見やる。
「紅、足元気をつけるんだよ。あ、一応お嬢さまも気をつけてくださいね」
優しげに目を細める碧にみのりが頷く。
ねじ切れるかと思えるほどの痛みが胸に去来し、涼介はシャツを掴んだ。
「お兄ちゃんたちー! 早くー!」
太一の朗らかな声が耳に響き、我に返る。
いけない。普通にしていなくては。
「ああ! 今行くよ!」
涼介はみのりたちから視線を外し、太一の元へ向かう。
「お嬢さま、行こう」
「ええ、そうね」
紅の言葉に同意するみのりの声を未練がましく追っていると、
その後ろから山波が声を張った。
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