Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
一
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暗い境内の裏手に碧を呼び出した涼介は、外灯の明かりを背に碧へ向き直った。
だが、仄明るい光の中で碧の興味深げな瞳と視線がぶつかった途端、
緊張で身が震えてしまい声が出ない。
「ええっと、あの……あのですね……」
涼介は頬を掻き窺うように碧を見る。
「はい。なんでしょう」
碧が微笑んできて思考が停止した。
尊敬し、敬愛している碧が目の前にいる。
聞きたいこと、言いたいことが多くありすぎて、
どれから話すべきなのかわからなくなった。
(お、落ちつけ俺……)
まず昔助けてくれたことに対して礼を言うべきだろう。
(いやいや……)
駄目だ。きっと彼はそんなことを覚えてはいないのだから。
(そもそも時間がかかりすぎるし)
みのりたちを長く待たせるわけにはいかない。
涼介は改めて碧を見やる。
品のいい黒のスーツに身を包み、
紳士然とした姿で佇む彼には一ミリの無駄もない。
(完璧すぎるんだよな……)
どこか長兄の雅秋にも似たその風体を前にして、涼介は吐息する。
(みのりさんが惚れるのも無理ないよな)
四六時中こんな人間と一緒にいて、恋に落ちないわけがない。
(今更何考えてんだって話だよな)
諦めると決めているくせに往生際が悪いことこの上ない。
情けなくてかぶりを振り、無理やり雑多な感情を押しやった。
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