Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「うっ……」


　呻く満を前に目をしばたたく。

不思議に思って顔を下から彼の顔を覗き込むと、満がさっと顔を背けた。


（やっぱり嫌われちゃったんだ）


　胸の中に重くて黒い何かが渦巻いていくのがわかる。


（だめ。泣いちゃだめ）


　涙なんかを流してしまったら、また満が困ってしまう。

俯いて痛む胸を堪えていると、やけに明るい声が聞こえてきた。


「それじゃあ皆さん、行きますよー」

「はーい！　麻里さん、満君をちゃんと連れてこないとダメよー」


　直実の声かけに従い、律子も踵を返してしまう。


（ええ！　そ、そんな！）


　さっさと店の扉に手をかけてしまう直実を見て、麻里は慌てる。

すると、律子がちらりと一瞬だけ視線を向けてきた。


（あ……！）


　フォローしてくれたのだと解り、心が一気に浮上する。


（そうだ。今は一人じゃない。２人も味方がいるんだもの）


　弱気になってばかりでは意味がない。

話を聞いてもらえさえすれば、彼の苦しみが和らぐかもしれないのだから。


「お、おい！　何を勝手に……」


　うろたえたように片手を伸ばす満を尻目に、麻里も手を上へ挙げる。


「はーい！　行きましょう？　満さん」


　大胆だということは百も承知で満の腕を取る。

硬く筋肉質だけれど温かなぬくもりに嬉しくなりながら腕を引くと、

満が混乱した様子で顔を反らせた。


「は？　お、おい！　俺は行かないって言ってんだろう！　おい麻里聞けよ」


　聞こえているけど、聞かない。

麻里は不満を言い募る満の手をぐいぐいと引いて、店の中へ入った。