Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「ええ。他の人は口だけなのに、大輔さんだけは親身になって

くれてね。私、結構大輔さんに対してひどい態度をとっていたのよ。

それなのに優しい人だから彼」


　頬を桜色に染めながら義兄のことを語る直実に、律子は自然と

口元が緩んだ。


「お義兄さんって顔は冷たいのに、本当に優しい人ですよねー」


　初めて会ったときはその目つきの鋭さに怯えてしまったが、

それはいい思い出だ。


（お義兄さんってちょっと不器用な人なのよね。

感情の出し方とかが……）


　不器用という面だけを見れば、満も同じかもしれない。

彼の場合は義兄とは違い、すぐ傍若無人に振る舞ってしまうところが

器用でないと言える。


（今の話で何か満君の心に刺さってくれてたらいいんだけど）


　そう簡単にはいかないようだ。さっきと同じ体勢のまま、１ミリも

動いた様子はない。

律子が内心で舌打ちをしていると、麻里が黄色い声ではしゃいでいた。


「すてきな方なんですね」

「そうなのよ。とっても素敵な人、いいえ、獣人なの。

そのときね、私、初めて自分は今まで何を見てきたんだろうって

思ったわ」


　直実が苦笑しながら言った言葉に、律子は深々と首を縦に振る。

自分も同じだ。義姉夫妻に会わなければ、今でも獣人は

『怖いモノ』という固定観念に囚われていたに違いない。