Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「それは、とてもよくわかる気がします」

「私も、その感覚はわかります」


　律子は、よくわかると言った麻里の言葉に目を瞠る。まさか彼女が

そんな気持ち抱いていたとは思っていなかった。

むしろ最初から獣人に対しても何の隔たりも感じていないように

見えていたからだ。


（獣人に関してじゃないとしたら、今まで何を見てきたってところに

共感したのかしら？）


　内心で首をひねっていると、満が初めて口を開いた。


「どういう意味だ」


　眉間に皺を寄せ睨みつけてくる青年に律子はそっと息を吐き出す。


（やっと反応してくれて嬉しかったけど、その顔は喜べないわー）


　麻里だってあの顔を見れば怯えてしまうのではないだろうか。

律子は心配になり、彼女の顔色を窺った。だがそれは杞憂だった

ようだ。麻里は、恐怖どころか恋をしている人特有の恍惚とした

ような表情で満を見つめていた。


（満君だったらどんな顔でもいいってわけね）


　若干肩透かしを食らったような気分になったが、自分も昔は

こんなふうだったのかもしれないと思い直す。すると、直実が満への

フォローを買って出てくれた。


「獣人を勝手に悪だと思い込んでいたってことです。彼らは自分たちと

何も変わらなかった。いいえ、むしろ私たちよりも優しい存在かも

しれない。大輔さんを知って私はそう思うようになりました」


　直実が導き出した答えに、満は少しの間黙考する。そして、視線を

ずらし投げ捨てるように呟いた。