Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「長さんが最後に言っていた『約束』が彼を頑なに

しているのかもしれないわね」


　直実の予想に麻里は目を瞠る。

誰かとの約束が問題になっているのだとしたら、

それを叶えることで、彼を苦しみから解放できるかもしれない。


（少なくとも、人間と獣人との間の溝を、少しくらいは埋められるかも）


　スカートをきゅっと握り締め、麻里は直実を見つめる。


「いつか、訊いたら話してくれる日が来るでしょうか……」


　微かな希望へすがるように尋ねると、律子が背中を軽く叩いてくる。


「麻里さんになら話してくれるわよ！　今からそんなことでどうするの！」


　叱咤され、麻里はうなだれた。


「自信ありません……」


　弱音を吐きたくはない。

だが、こと満に関しては全然自信が持てない。

とにかく、これ以上彼の迷惑にだけはなりたくないのだ。


（私がいるから上手くいかないんだったら、もう会わないほうが

いいのかもしれない）


　少なくなったティーカップの中身を覗き込んでいると、

直実の鈴の鳴るような笑い声が聞こえてきた。