Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「そうね。

ふふふ、それにしても長さんって悪ぶってるけどとても真面目な方なのね」


　直実の言葉に麻里は弾かれたように彼女を見やる。


「はい！　そうなんです！」


　くしゃくしゃになった千円札へ視線を向けると、斜めで律子も同意してくる。


「たしかに約束も守ろうとしてるし。部下思いっぽいしね」


　同じく千円札を眺める律子に、麻里は力強く告げる。


「ふふふ。ごちそうさま」


　事実を言っただけなのだが、惚気と取られてしまったらしい。

だが、言いたいことはそんなことではない。


（こんなに真面目な人を、これ以上困らせたくない）


　言いにくいことを言葉にするのには力がいる。

麻里はどうにか自分の本音を理解してもらおうと、だから、と口調を改めた。


「私なんか相手にされないんじゃないかって。それでも好きでいていいのかって」


　迷いを言葉にすると、直実が微苦笑で応じてくる。


「自分を卑下するのはよくないわよ。

それに好きだったら自分からアタックすればいいだけなんだし」


　確かに直実の言い分は正しい。

だが、人間の、しかも黄梅の市民でもない自分が、

そんなことをしてしまっていいのだろうか。

麻里はテーブルの下で手を握り、でも、と声を絞り出す。


「私の余計な想いのせいで彼のやりたいことを阻害させて

しまっていたらと考えるとつらくって。

このまま言わないで敵らしくいることのほうが彼のためになるんだとしたら、

そのほうがいいのかもって思ってしまうんです」


　心の奥に閉まっていた混沌とした思いをすべて吐き出すと、

それまで黙っていた律子が言葉を紡いできた。