Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
C
「どうしたの?」
「開かないんだ」
涼介がセキュリティーと扉を交互に触れる。
(もしかして涼介もあんまりセキュリティーの解除をしたことが
ないのかしら?)
自分たちがいるから見栄をはったのかもしれない。
(ふふふ。案外涼介も意地っ張りなんだわ)
自分との共通点を見つけみのりは嬉しくなる。
(たしか良い女性の条件は、男性の失敗について責め立ず、
それとなくフォローをするもんだって、何かの本で読んだことが
あるわ)
なんて声をかけよう。
(最初にカードを上から下へスライドさせて、カメラを見ていたの
よね……)
みのりは腕を組み、反芻する。暗くなった空が視界に入り、閃いた。
「カードを入れる向きを間違えたんじゃない?」
玄関口に明かりがあるとはいえ、手元などは自分の陰で暗くなる。
カードの向きを間違えていても不思議ではない。しかし、涼介は
あまり納得していないようだった。
「そうかな? そんなことないと思うけど……」
首をかしげながらカードを確認し、再度カードをスライドさせる。
だがやはりロックされたままのようだ。涼介が眉間に皺を寄せる。
みのりが押し黙ったまま彼を眺めていると、碧が近づいてきた。
「どうかしましたか?」
「中に入れないんですよ。なんか認証されないみたいで。ちょっと
待っててください」
碧の登場に涼介はホッとしたのだろうか。強張っていた顔が少し
だけ緩んだ。そして肩を竦めて見せたあと、インターフォンを
押した。
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