Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
G
『申し訳ございませんが。雅秋様のご命令ですので』
幸恵のすまなさげな言葉にみのりが尋ねる。
「本気でいれないつもりなの?」
だが、それに答える者は誰もいない。
沈黙が答えだとでも言うのだろう。
ふざけるな、と凉介は壁に手をついた。
「なら、雅秋兄さんを出してください。今すぐ。あなたたちじゃ埒が明かない」
出て来てはいないが、おそらく宮田夫婦の他にも数人いるのだろう。
そう、特にあの黒服たちが。
(下手すると自宅で大立ち回りとかか? 勘弁してくれよ)
頭を掻きむしりたい衝動を必死で抑えていると、碧がみのりの言葉に応じた。
「仕方ないですよ、お嬢様。当主の言うことは絶対ですから」
碧の言葉に呼応するかのように幸恵の声がくぐもる。
『そうはもうされましても……』
彼女にその権限はない。
それは自分にもよくわかっている。
もう石で窓ガラスを割るしかないか。
物騒なことを考えていると、紅がさらなる単語を口にする。
「暴君」
まったくだ。
凉介は傍目で頃合いのいい石を目線だけで探しつつ、
インターフォンに向かって怒鳴った。
「いいから! 今すぐ捜して連れて来ください!」
『は、はい!』
慌てたように通信を切る幸恵。
よく考えたら彼らにここまで怒鳴りつけたことは一度もなかった気がする。
(これもみのりさんのお陰かな)
絶対に諦めない彼女の心が自分の心をも変えた。
だから、これ以上負けるわけにはいかない。
凉介は深呼吸して、次に来るであろう嵐に備えた。
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