Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
I
「兄さんこそ。本当に俺の兄さんなら弟の顔を忘れたりはしないと
思うんですけどね。それに、今の声聞いたでしょう?
梅畑雅秋ともあろう人間が次期当主をないがしろにしていいんですか?」
涼介が深いため息のあと、皮肉気に語りかける。
その言葉にみのりは激しく同意した。
(本当よ。さすが涼介だわ!……まあ、次期当主のくだりは必要
なかったかもしれないけど。
この際だからもっと言ってやりなさいよ!)
涼介を鼓舞するように内心で応援する。後ろから紅の声が
聞こえてきた。
「鹿さん、角、出てる」
みのりはぎょっと目を瞠り、振り返る。そこには拳を震わせ扉を
見据えている飛田の姿があった。
「か、家族にこんなひどいことするなんて、良くないと思いますよ」
飛田が声を震わせながら啖呵を切る。碧が宥めるように彼の肩を
軽く叩いた。
「仕方ありません、
ご当主はご家族の顔も忘れてしまう方らしいですからね」
柔らかな声音とはうらはらに、内容はかなりスパイスが効いている。
攻撃としては十分だろう。笑顔のまま毒を吐く碧を感心していると、
インターフォンから反論が飛んできた。
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