Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





IB




(この間文兎先生を使って、店に呼びつけたくせに何言ってるのよ!)


 市長はこのまま煙に巻いて有耶無耶にするつもりなのだろうか。

可能性はある。なにせ、相手は政治家だ。口論の間に話をすり替える

ことなど、お手の物だろう。


(どうすればいいの? 私が何かを言う? でもさっき、涼介に

任せるって言っちゃったし……でしゃばったらもっと嫌われちゃう

かもしれない……)


 みのりは腕を組み、地面を見据える。磨きあげられた黒の革靴が

視界の端でちらついた。ハッとして顔をあげる。


(そうよ! 私が言わなくても他に方法があるじゃない!)


 前々から市長は碧に対して何か思うようなところがあるようだ。

それに、碧も市長にはやけにひどい態度をとっている。

みのりは内心でほくそ笑みながら、顔を背後へ向けた。


「碧、市長に嫌味の一つでも言ってやりなさいよ。

得意でしょうそういうの」


 みのりは碧へ発破をかける。しかし彼は肩を竦め、首を横に振った。


「いえいえ、非凡な身である僕にはとてもとても」

「兄さん、頑張って」


 紅が、碧の言葉を遮るように割って入る。そのあとを飛田が続いた。


「僕も応援しますよ、碧さん!」


 紅の応援に碧の顔が一瞬で崩れた。頬を上気させ彼女を見つめて

いる碧の耳には飛田の応援は届いていないかもしれない。

だが問題ないだろう。すでに碧はやる気を漲らせている。


(さすが紅ね)


 みのりは心の中で紅をほめた。碧が一歩前へ出る。そして満面の

笑みをインターフォンへ向けた。










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