Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
IB
(この間文兎先生を使って、店に呼びつけたくせに何言ってるのよ!)
市長はこのまま煙に巻いて有耶無耶にするつもりなのだろうか。
可能性はある。なにせ、相手は政治家だ。口論の間に話をすり替える
ことなど、お手の物だろう。
(どうすればいいの? 私が何かを言う? でもさっき、涼介に
任せるって言っちゃったし……でしゃばったらもっと嫌われちゃう
かもしれない……)
みのりは腕を組み、地面を見据える。磨きあげられた黒の革靴が
視界の端でちらついた。ハッとして顔をあげる。
(そうよ! 私が言わなくても他に方法があるじゃない!)
前々から市長は碧に対して何か思うようなところがあるようだ。
それに、碧も市長にはやけにひどい態度をとっている。
みのりは内心でほくそ笑みながら、顔を背後へ向けた。
「碧、市長に嫌味の一つでも言ってやりなさいよ。
得意でしょうそういうの」
みのりは碧へ発破をかける。しかし彼は肩を竦め、首を横に振った。
「いえいえ、非凡な身である僕にはとてもとても」
「兄さん、頑張って」
紅が、碧の言葉を遮るように割って入る。そのあとを飛田が続いた。
「僕も応援しますよ、碧さん!」
紅の応援に碧の顔が一瞬で崩れた。頬を上気させ彼女を見つめて
いる碧の耳には飛田の応援は届いていないかもしれない。
だが問題ないだろう。すでに碧はやる気を漲らせている。
(さすが紅ね)
みのりは心の中で紅をほめた。碧が一歩前へ出る。そして満面の
笑みをインターフォンへ向けた。
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