Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





AIA




「鹿さん、早く」


 紅が飛田へ発破をかける。みのりもそれに便乗した。山波さんが

家のどこかに潜んでいるなら、娘である芽衣子の恋人の声に反応する

はずだ。みのりは、動物に鞭を入れる調教師のような気分で飛田へ

喝を入れた。


「芽衣子さんと別れることになってもいいんですか!」

「は、はいぃぃ!」


 恋人との別れを想像したのだろうか。嫌ですと言外に匂わせながら、

飛田が声を裏返らせた。そして涼介が押さえ込んでいる黒服をよけ、

室内へ上がり込もうとした時だ。廊下の奥からうなり声とともに

影が走り寄ってきた。


「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

「山波さん?!」


 涼介の声に、影が誰なのか判明する。眉を吊り上げ近づいてくる

彼の顔は仁王像のようだった。


「えっと?」


 なぜ彼は雄叫びをあげながら近づいてきたのだろう。山波の所在が

わかったことに安堵するよりもそんな疑問が脳裏をよぎる。


「ふんっ!」


 呆気に取られている面々をそのままに、山波が鼻を鳴らす。

仁王立ちで見下ろしてくる姿は、まさに娘の恋人に敷居を

跨がせないように立ちはだかる父親そのものだった。










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