Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





AIH




「俺は体のいい道化役ってわけですか」

「それも違う。試練だよ、お前なら分かるだろう?」


 市長が涼介に朗らかな笑みを向ける。表情だけ見れば、弟想いの

兄に見えたかもしれない。だが、彼の口調と内容はまったく

かみ合っていなかった。


「くっ……!」


 涼介が唇を噛みしめ悲痛そうに顔を歪める。

なんと言って慰めればいいのかもわからない。それでもそばにいる

ことを伝えたくて、みのりは彼の名前を呼んだ。


「涼介……」


 しかし涼介からの反応はなく、返ってきたのは紅の呟きだった。


「陰険」

「紅、口にしなくたって、この男が陰険なのは目に見えているよ」

「たしかに」


 さも当たり前だというように告げられた碧の意見に、紅が深々と

首を縦に振る。作り笑いを貼りつけたままだった市長の顔が側近たちの

嫌味に、引きつったものへと変わる。


「君だけには言われたくないよ、碧」


 碧の耳には市長の声は聞こえないようだ。雅秋の言葉を無視し、

話を変えてきた。


「そんなことよりもお嬢様方、梅畑市長と戯れるよりももっと

重要なことがあるのではないですか?」


 碧の言葉に、みのりは目を瞠る。


「そうだったわ。涼介!

今は市長よりも山波さんを説得しなくっちゃ!」

「はい。山波さん! お願いします! 話を聞いてください!」


 落ち込んでいる暇など今はない。そう言外に含ませる。翳っていた

涼介の瞳が力強いものへと変わった。










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