Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





A




「みのりさん……」


 それなのに、吐いて出た言葉は地雷そのもので。

涼介は己の失態に生唾を飲み込んだ。

 みのり、という言葉に反応し、碧が小首をかしげる。

涼介は焦り、必死に思考を巡らせた。

なんとかして話の焦点を合わせなければ。

涼介は人差し指を上に向け、言葉を捻り出す。


「みのりさんと、そう! みのりさんと話してた時に彼女から聞いたんですけど、


高松さんって、梅八家の人間なんですか?」


 どうにか一番訊きたい話に軌道修正することができ、内心で冷や汗を拭う。

大人しく返答を待つと、碧が瞳を瞬いた。


「みのりお嬢様との会話の中で高松の名前が出たのですか?」


 碧の問いに涼介は頷く。

彼にわからぬよう深呼吸を繰り返したことで、すでに気持ちは凪いでいた。


「はい。いえ、正確には、みのりさんが獣人の長とうちの長兄が話してるのを聞いたらしく、

そこで高松さんが梅八家の人間だ、と。でもそうだとすると、彼はどこの分家に属しているんですか?

そもそも、なぜうちの兄と……。こうなると、何かたくらんでいるのは確実だと思いまして……」


 兄の雅秋が犯人だとして、あの高松という男は何者なのか。

兄が都の人間まで使い、黄梅市を手中に治めようとしているのだとしたら、

何がなんでも阻止しなければならない。

そのためには、何よりも情報が必要不可欠だ。


(一番知ってそうなのって、碧さんだけだもんな)


 みのりの悲しげな横顔が頭をよぎり、唇を噛み締めた。










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む