Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





CIIE




「返す言葉もございません。

でも、あの時の俺には兄に逆らう勇気はありませんでした」


 正直に告げる次兄に碧が首を上下させる。


「なるほど。こちらに便宜を図ってくれてたのは、

その時の後悔もあって、というわけですね」


 推理する碧に向かい雅仲が唇を噛み締める。


「その、通りです。俺はもう後悔したくはないので」

「2対1。市長、負け」


 雅仲の言葉を聞くなり紅がぽつりと呟いた。

それが我慢の限界だったらしい。

突如雅秋がテーブルを叩いた。


「違う、違う、違う!」


 激しくかぶりを振る雅秋の言葉に対し、涼介は言葉をかぶせる。


「いいや、違わない。雅秋兄は孤独だったんだ。

ただ抱きしめてくれる人が欲しかったんだ。

でも、雅秋兄。あなたはもう孤独じゃないだろう?

姉さんだっている、由真だって、雅仲兄に姉さん、もいる。

それに遠くにいるけど両親だって健在だし、それに、俺もいるから」


 長兄をこれ以上孤独にはしない。

だが同時に、これ以上長兄の思惑通りに生きるつもりはない。

宣言を込めて語ると、

何故か雅秋がショックを受けたかのように顔面を歪ませた。


「涼介?」


 頼りない声で名を呟かれ、涼介は吐息する。


「雅秋兄は俺が怖がるのを見る度胸の空くような思いをしてた。

でも、同時に俺に完全に嫌われることを恐れていたんだろう?」

「あ……」


 雅秋自身も意識したことがなかったのかもしれない気持ちを暴いてみせると、

予想通り雅秋は一瞬言葉を失った。


(本当に。困った長兄だ……)


 涼介は内心で深い溜め息を吐いた。










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