Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
CIIF
「そんな心配はないよ。それより、祖父さんや祖母さんの過度な
期待を抑え込んでいてくれて本当にありがとう」
涼介が柔らかな笑みを市長へ向ける。
数々の試練と称した虐待を受けてなお、彼は兄からの愛情があったと
信じて疑っていないようだった。
(なぜあんなふうに思えるのかしら?)
血の繋がりからくる信頼なのだろうか。
彼らに強い絆のようなものを感じ、胸に小さな痛みが走る。
(血なんて関係ないわよね。
だって私はお母様からの愛情を感じたことがないんだから……)
みのりは、素直に兄からの愛情を信じられる涼介のことが
うらやましく思った。彼のような人間だったら、美都子との仲も
ここまでこじれていなかったかもしれない。
(いいえ、違うわ。私は私だもの)
嘘偽りのないこのままの自分を美都子に認めて貰わなければ
意味がない
(怖がっていちゃダメよね。
涼介だって市長に立ち向かっているんだもの)
その結果が今だ。
涼介に対してずいぶんと尊大な態度だった市長が狼狽えている。
「そ、それは……」
涼介の言葉が妄想ではなく真実なのだろうか。
視線を彷徨わせ声を詰まらせる雅秋へ、涼介が優しく語りかけた。
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