Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





IIE




「紅ー!!」


 懇願に近い碧の顔は、普通ならば悲壮そうに見えるはずだ。

だが、紅に構ってもらえていることに満足しているのかもしれない。

どこか嬉しげに見える。通常運転の彼らのやりとりに、みのりは

だんだんとムカムカしてきた。


(なんか私ばっかり気を揉んでる気がする。

私だって失恋したばっかりなのに!)


 この男は一度痛い目にあった方がいいのではないだろうか。

碧の脂下がった顔を見ているうちに、そんな考えが脳裏をよぎる。

気づけばみのりは彼を怒鳴りつけていた。


「うるさいわよ碧! そんなこと言っている暇があったらさっさと

車の用意でもしなさい!」


 拳を握り鼻息を荒くしていると、涼介が両手を前に広げ宥めてくる。


「まあまあ、みのりさん。いいじゃないか、

仲が良いってことだから」


 みのりは眉をひそめ、涼介の言動をいぶかしく思った。


(もしかして涼介は、碧の紅への好意を普通の兄妹愛だと

思っているかしら?)


 それならばさっきした誤魔化しも納得できる。みのりは平和そうに

笑う涼介を眺めながら小さくため息を吐いた。










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