Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
CCI
「あ、ああ。あの橋のことね。わかっていたわよ私だって。
そ、それで何時頃に集まればいいのかしら?」
どうやら思い出してくれたらしい。
声が上擦っているのは気づかなかった自分を恥じているのだろう。
(前言撤回。やっぱり可愛いなあ)
こんな表情を見られるなら、
からかいたい衝動に駆られる碧の気持ちがわかった気がする。
内心で深く首を縦に振りながら、面には出さずみのりへ答えた。
「9時ぐらいでいいんじゃないかな?」
提案すると、みのりがあっさり承諾する。
「9時ね。わかったわ。
って、今の会話全部、山波さんに聞こえてるんじゃない?」
スマホを指さすみのりに答えたのは山波だ。
『はい。聞こえていますが……。一体全体どうなってるんですかな、
この携帯は。複数の声が聞こえてきますが』
戸惑ったようすの声音で尋ねる山波に、碧がくすりと肩を揺らす。
「それはもちろんそうですよ。
何せ、スピーカーフォンなのですから。山波さん申し訳ありません」
『いいえ。では9時に橋の袂でお待ちしております』
山波が改めてみのりについていく意志を示してくれる。
「よ、よろしくお願いします」
「山波さん、お嬢様のこのような失態は極めて稀なことですので、
どうかお忘れください」
姿勢を正してみのりがスマホへお辞儀する。
(いいなあ……)
みのりを素早くフォローする碧を、涼介はまぶしく眺めやった。
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