Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





CCI




「あ、ああ。あの橋のことね。わかっていたわよ私だって。

そ、それで何時頃に集まればいいのかしら?」


 どうやら思い出してくれたらしい。

声が上擦っているのは気づかなかった自分を恥じているのだろう。


(前言撤回。やっぱり可愛いなあ)


 こんな表情を見られるなら、

からかいたい衝動に駆られる碧の気持ちがわかった気がする。

内心で深く首を縦に振りながら、面には出さずみのりへ答えた。


「9時ぐらいでいいんじゃないかな?」


 提案すると、みのりがあっさり承諾する。


「9時ね。わかったわ。

って、今の会話全部、山波さんに聞こえてるんじゃない?」


 スマホを指さすみのりに答えたのは山波だ。


『はい。聞こえていますが……。一体全体どうなってるんですかな、

この携帯は。複数の声が聞こえてきますが』


 戸惑ったようすの声音で尋ねる山波に、碧がくすりと肩を揺らす。


「それはもちろんそうですよ。

何せ、スピーカーフォンなのですから。山波さん申し訳ありません」

『いいえ。では9時に橋の袂でお待ちしております』


 山波が改めてみのりについていく意志を示してくれる。


「よ、よろしくお願いします」

「山波さん、お嬢様のこのような失態は極めて稀なことですので、

どうかお忘れください」


 姿勢を正してみのりがスマホへお辞儀する。


(いいなあ……)


 みのりを素早くフォローする碧を、涼介はまぶしく眺めやった。










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