Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





CDIA




「行こう」


 みのりは、涼介に手を掴まれ、バランスを崩す。

ガタンと音を立て椅子から立ち上がった。


「わぁ、え? ちょっと? え?」


 訳がわからず視線を彷徨わせていると、紅が頬を微かに

膨らませていた。


「ダメ」


 右手を掴んでこようとする彼女を、またしても碧が邪魔する。

自分の元へ引っ張るように紅の肩へ手を置いた。


「はいはい、紅。

馬に蹴られたくなかったからおとなしくしてようね」


 涼介の突飛な行動についてこの側近は何か知っているのだろうか。

訳知り顔で涼介に頷いて見せると、彼も目礼して答えた。

そして部屋を出て行く。

手を掴まれたままのみのりももちろん強制的に歩くことになり、

困惑しながら階段を下りる。


(なんなの? あらかじめ碧に話を通していたってこと?)


 だが涼介の味方をするのは、碧だけではなかった。

紅を阻止する碧を援護するかのような雅仲の声が聞こえてくる。


「あ、そうだ。妻が作ったアイスがあるんですよ。

マスカットのなんですけどおいしいですよ。

少し召し上がりませんか?」

「それはいいですね。ほら、紅も好きだろうアイス。

しかもマスカットの味だって」

「アイス?」

「ええ。アイスです」

「……食べる」

「じゃあ、すぐに用意しますね」


 みのりは背後から聞こえてくるデザートの存在に足を止めたく

なった。しかし、有無を言わせない雰囲気の涼介に立ち止まる

こともできず、素直に彼のあとに付き従った。










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