Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
一
III
「今、お時間よろしいですか。はい……」
「よし。これで何とかなりそうね。紅、ありがとう」
車の手配は問題ないだろう。碧の会話を聞くともなしに耳に入れ
ながら、みのりは紅へ笑いかける。照れくさそうにはにかむ彼女の
姿を見つめていると、涼介がぼそりと囁いた。
「へ? 紅さん? まさか……」
「? 涼介何か言った?」
「い、いいや。何も?」
紅の名前以外はよく聞き取れなかった。しかし、みのりが再度
問いかけても、彼は誤魔化すように首を横に振るだけだ。
もしかしたら紅の笑った顔に、無意識で名前を呼んでしまっただけ
なのかもしれない。それを問い詰めたから慌てているのだろう。
(訊いて損しちゃった……)
空笑いを続ける涼介の顔が見たくなくて顔を明後日の方向へずらす。
そして、まだ電話を続けている碧へ視線をやった。
「実はですね飛田さんのお義父さんである山波さんが連れ去られて
しまいましてね。ええ。僕たちも追いかけたいのですが、車がなくて
途方に暮れていましてね。もしよろしければ飛田さんに迎えにきて
いただきたいと思いまして」
淡々と語る碧の言葉にみのりはぎょっとした。
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