Gold Plum

第六章


対峙


〜善郎＆太一の場合〜


四


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　恥ずかしくないもん。

太一が不貞腐れながら呟いた声に気づいたのか、里夫の明後日を

向いていた視線が戻る。


「てか、オレのことじゃねーんだよ。

他の知らない獣人や人間にってことだよな、おっさん」


　里夫は善郎に助けを求めるかのように運転席の背もたれに

しがみついた。それに驚くでもなく、善郎は鷹揚に頷く。


「そうだ。その通りだ。さすが邦夫さんのお孫さんだな！」

「お、おだてたって何にも出ねーぞ」


　里夫が嬉しそうに口元を綻ばせながら、後部座席の背もたれに

背を預けた。だが善郎の方はなぜか憤然とした様子でミラー越しに

睨み据えてくる。


「何にもいらん！　ったく、子供はおだてるとすぐこれだ」

「また子供はーって言った」


　善郎の口癖なのだろうか。さっき指摘したばかりの言葉を太一が

言うと、善郎の吊り上っていた瞳が下がる。


「う……。まあ、とにかく！　仲が良いのはいいことだ」


　ばつが悪かったのかもしれない。善郎は誤魔化すように、

うんうんと大げさに首を縦に振る。その顔が急に真面目なものへと

変わった。