Gold Plum

第六章


対峙


〜善郎＆太一の場合〜


四


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「時と場合だんべか……。

きっと太一君は山波さんのその線引きに納得がいっていないんだべな」


　先ほどの表情が嘘だったかのように、邦夫の表情が

見慣れたものになる。その表情のまま邦夫がこちらへ顔を向けた。


（どうしよう。リオのお祖父ちゃん、ぼくに聞いてるのかな？）


　太一は焦った。なぜなら、邦夫の表情にびっくりして彼らの話を

よく聞いていなかったからだ。なんと言えばいいのか分からず、

へらりと笑って誤魔化すと善郎がおもむろに口を開く。

太一はホッと胸をなで下ろした。


（今度はちゃんと聞いておかないと）


　居ずまいを正し、善郎たちをじっと見つめる。


「互いが手に手を取って、というのは理想です。

ですが、人間と違い獣人の未知なる力は脅威にもなります。

ですから……」


　善郎は、邦夫の表情を窺いながらも最後まで自分の意見を

言い切った。それに対し邦夫は、怒るでも悲しむでもなく、

柔和な笑みを善郎へ向ける。


「そうだんべな。

獣人の力のことに関しては信じてもらうしかねーべ。

だから獣人は、いや少なくともわしら三長老は人間が

信じてくれるのをずーっと待ってるんだべ」


　遠くを見つめるように話す邦夫に太一は悲しくなり、

身を乗り出しながら声をあげた。