Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





IIIC




「いえいえ、どうせ暇になっちゃったところでしたから」


 飛田の言葉に涼介は一瞬内心で首をかしげる。

 暇になった、というのはどういう意味だろう。


(芽衣子さんとのデートの予定がなくなった、とかかな?)


 山波の娘のことを思い浮かべ、頬を掻く。


(重いなあ、色々……)


彼の恋人である芽衣子の父親を、連れ戻しにいかなければならないのだ。

それも自分の家から、である。


(兄貴たち、何考えてるんだよ。本当に)


 唇を噛み締めていると、紅の声がした。


「鹿さん、ありがと」

「あ、はい。どういたしまして」


 お辞儀する紅へ飛田が柔和な笑みを浮かべる。


「では早速ですが、藤端(ふじはし)へ連れて行ってもらえますか?」


 碧の問いに飛田が首肯した。


「はい。どうぞお乗りください」

「ありがとうございます。では、僕が助手席に乗りますので、

お嬢様たちは後部座席へお座りください」


 碧に促され、涼介は気を取り直す。自分が弱気になっていてどうする。

これではみのりや太一を守ることなどできないではないか。

 涼介は碧へ視線を向け、大きく頷いた。










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