Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
一
IIIC
「いえいえ、どうせ暇になっちゃったところでしたから」
飛田の言葉に涼介は一瞬内心で首をかしげる。
暇になった、というのはどういう意味だろう。
(芽衣子さんとのデートの予定がなくなった、とかかな?)
山波の娘のことを思い浮かべ、頬を掻く。
(重いなあ、色々……)
彼の恋人である芽衣子の父親を、連れ戻しにいかなければならないのだ。
それも自分の家から、である。
(兄貴たち、何考えてるんだよ。本当に)
唇を噛み締めていると、紅の声がした。
「鹿さん、ありがと」
「あ、はい。どういたしまして」
お辞儀する紅へ飛田が柔和な笑みを浮かべる。
「では早速ですが、藤端(ふじはし)へ連れて行ってもらえますか?」
碧の問いに飛田が首肯した。
「はい。どうぞお乗りください」
「ありがとうございます。では、僕が助手席に乗りますので、
お嬢様たちは後部座席へお座りください」
碧に促され、涼介は気を取り直す。自分が弱気になっていてどうする。
これではみのりや太一を守ることなどできないではないか。
涼介は碧へ視線を向け、大きく頷いた。
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